スイートピーと彼岸花
男性2:女性0 短め
男性1→落ち着いた性格で、男性2の高校時代からの親友。数年前から仕事の為上京しており、以前はよく彼の世話をやいていた。
男性2→お調子者で寂しがり屋。男性1の親友。地元に残っている。
男性1 「よお、久しぶりだな。」
男性2 「そーだな。お前全然こっちに帰って来ねーんだもん。」
男性1 「前にこっちに帰って来たのは去年の夏だっけか?」
男性2 「そうだぜ。1年ぶりだぞ1年ぶり!」
男性1 「悪いな、こう見えて忙しくてな。」
男性2 「全くよー。土産は?」
男性1 「お前の好きだった月明堂の大福買って来たから許せよ。」
男性2 「お、分かってるじゃん。いいぜ、今回ばかりは許してやるから、さっさと寄越せよ。」
男性1 「ほい、全部やるよ。」
男性2 「太っ腹!相変わらず美味そうだなー!」
男性1 「落ち着いて食えよー。」
男性2 「分かってるよ!」
男性1 「にしても、やっぱり久しぶりに帰って来ると、懐かしいなー。
一年間が空くだけで、店とか道路とか、結構変わるもんなんだなぁ。」
男性2 「あぁ、最近ここらにバイパスを作るって色々やってるらしいからな。それのせいだろ。」
男性1 「何だか少し、寂しいとか思う俺は歳とったのかねぇ。」
男性2 「はっ。そんな事は30こえて、良いオッサンになってから言えよ。」
男性1 「歳とったと言えばさー、俺もいい加減身を固めねぇとって思ってよー。」
男性2 「は?なに、お前結婚すんの?」
男性1 「実はな、報告がてら帰って来たんだ。俺、今度結婚する事になった。」
男性2 「え、ちょ、マジかよ?!お前が結婚?!信じらんねー!相手は?!」
男性1 「相手は・・・おっとりしてるっていうのかな、穏やかな人だよ。
俺がぐずぐず迷ってても、情けなくても、じっと黙って見守ってくれるような。」
男性2 「へぇー。お前の口からそんな言葉が出るとはなー。いや、ちょっと開いた口が塞がらねぇわ。」
男性1 「結婚式の手配やら何やらで今走り回っててよー。もう今から緊張がヤバイんだよなぁ。
胃が痛いっていうか、頭が腹痛っていうか。」
男性2 「おい、日本語になってねぇぞ。んで?式はいつなんだ?」
男性1 「まだ日取りは決まって無いんだけど、俺の勇姿、見ててくれよ。特等席用意してやっから。」
男性2 「おう、任せとけ!言われなくてもガン見してやるよ!」
男性1 「んじゃ、また来るわ。次は、お前の命日に。」
男性2 「・・・あぁ。」
(6年前)
男性2 「んじゃまた明日なー!」
男性1 「おう、またなー。」
男性2 「げぇ、赤信号かよ。あ?なんかあのトラックふらふらしてね?大丈夫かよ?」
男性1 「は?交通事故?んな馬鹿な・・・だって昨日、じゃあまた明日なって・・別れたんですよ?
嘘、嘘だ。うわあああああああ!!」
(現在)
男性2 「それにしても、ようやく自分の幸せを追いかけ始めたか。これで俺も一安心って訳だ。
死にそうな顔して毎年毎年、命日は勿論、事あるごとに来やがって。おかげでおちおちあの世にもいけやしねぇ。」
男性1 「でも、俺だけ幸せになっても良いのかって、今でも後ろめたいんだ。」
男性2 「馬鹿かお前。俺が死んだのと、お前の幸せは関係ないだろ。」
男性1 「学生の頃ってさ、基本的に家と学校が世界の全てだろ?
バイトもしてなかったあの頃の俺にとって、四六時中一緒にいた親友のお前は、世界の半分に近かった。」
男性2 「・・・あぁ。俺もだよ。」
男性1 「俺の世界の半分は、あの時削り落とされて、そこにずっと置き去りになった。何をやっても虚しかった。」
男性2 「知ってる。見てたからな。」
男性1 「何年もかけて、違うもので穴を埋めて、ようやく一歩踏み出したんだ。
それでも最後の穴だけは埋まらない。今でも空いたままだ。」
男性2 「・・・本当に、馬鹿だな。」
男性1 「だけど、その穴も、後ろめたさも、全部抱えて歩く事にしたよ。それがお前のいた証明だから。お前の遺したものだから。」
男性2 「・・・歪んでるんだろうな。そんな事を親友に言わせてるのに、嬉しいなんて思う俺も、お前も。」
男性1 「っと、悪い、話し込んじまったな。今度こそ退散するわ。」
男性2 「・・・また来いよ。待ってるから。」
男性1 「・・・え?今、あいつの声が・・・気のせいか。」
男性2 「じゃあな、馬鹿で歪で、俺の大事な親友。」